私はせなちゃんに勧められてとあるMMORPGに手を出した。
アメーバピグなんてものしか知らない私はその手のゲームの勝手がわからず、全体チャットやパーティルームで個人情報を喋りまくったり荒らしたりしてしまっていた。(当時9歳の上に社会経験がなく頭脳年齢が幼稚園児程度だったので、悪気はなかった)
せなちゃんがギルドを作って招待してくれた。
いつからだろう。せなちゃんはゲームにログインしなくなった。
双子キャラを作って遊んだり、馬鹿みたいなことして笑ったり、私の私だけの青春があのゲームにあった。
経緯はもう覚えていないが、他にも複数の友達ができた。せなちゃんの友達だったさくちゃんや、元々親友だったみらちゃん、むげちゃん……などを集めて、新しくギルドを作ることにした。
せなちゃんが作ったギルドの名前をもじって、名前は「天界のプリン」になった。今思えば不思議な名前だ。
そのギルドは大変賑わった。次第に女性10数名ほど、男性2名ほどのギルドになった。
リアルの実生活はというと、何も変わってはいなかった。
ただ引越しを転々としては、引きこもる毎日。
借金取りから逃げた先で、母親の店の元客のところに逃げたときがあった。
その時のことを私は鮮明に覚えている。
「さやか、あの人あんたの乳ずっと見てたよ」
私は初めて性的な目を向けられることに恐怖を覚えた。一刻も早くこの人の家を出たいと思った。そもそもパパがいるのになんで違う男の人の家にいるのだろうと。
そんな時でも、ずっとゲームに没頭していた。
女子小中学生が集まったギルドだったので、その年代特有のネチネチした陰湿な雰囲気もありつつも、みな仲良くやっていた。私は「特に仲いい存在」いわゆる依存のような関係にあった子が多かったので、よく嫉妬の対象にあっていた。(一時期3人くらいから同時に嫉妬の対象にされていた)
そのギルドの中で私は、いずみちゃんという子に恋していた。
共依存だった。いずみちゃんが学校から帰ってきても学校に行っている間も互いのことを考えていた。だけど、一度はOKされた告白も数日後には振られていた。
恋愛対象が女性ではなかったのだろうし、ネット恋愛もするような人ではなかったのだろう。
それでも私は考えた。
いずみちゃんと恋人になりたい。恋人になったらどうしよう?女の子同士だから養わないと。養うってどうしたらいいんだろう?中学生卒業すれば働けるのかな?いっぱい調べなきゃ。
え?中卒じゃ稼げないの?
じゃあ
じゃあ今から学校に行くにはどうすればいいの?
今更親に学校に行きたいとも言い出せない状況。借金取りから逃げたり、生活は不安定だったからだ。
一時期は勉強に取り組んだが、親の監視の目と回答を間違えた時の怒声がトラウマで手がつかず、なんと文字を書いた経験が少なすぎてひらがなすら書くのが難しかった私はスマホのデジタルペイントアプリで少しずつ字を練習した。とはいえ漢字は書き方が全く分からないので、手付かずだった。
そこから私の脳内は支配された。学校に行きたい。いずみちゃんを養いたい。養うためには…でもできない……どうしたら……
当時子供だった私は親元を離れる選択肢なんてなかった。親に愛されていると信じて疑わなかったし、社会を知らないからうちの家庭が普通だと思っていた。それに施設は怖いところだと親から聞かされていて、昔から何かあると「施設に入れるぞ」と脅されていた。
そこからだっただろうか、私の鬱が始まっていったのは。
つづく