高校

いずみちゃんに彼氏が出来た。

 

私にとって人生を大きく変える出来事だった。どうして、なんで私じゃないの。どんな男だよ。だれだよ。

私はいずみちゃんの本名を知っていたので、SNSや学校のページ等徹底して調べあげた。リア垢。母親や父親のFacebook。事業所。すべて。

住所もわかった、学校もわかった、出会ったらどうしてやろう。なんで私じゃないんだと刺殺してしまおうか。そんなことも考えつつ、親の束縛があるから私は友達に会いに行くことなど許されなかった。

 

ふと気付く。私の人生っておかしいんじゃないか……?

いずみちゃんとはいつの間にか疎遠になって喧嘩別れしていた。

今までの私の人生なんだったんだろう。

 

ここで現実に戻ってみよう。

住みは関東。その頃に妹が生まれていたので、家族4人になっていた。文字通りFXの有り金を溶かした父親のせいで、生活保護を受けることになる。

父親が暴れる。母親は窓から奇声を発して助けてと泣き叫ぶ。よくわからないが私も真似をしてみる。もうめちゃくちゃだった。

私は親に命令されたこと以外をすると怒鳴りつけられるため指示待ち人間として生きていたのだが、ある日はじめて自分で行動を起こした。

家に警察を呼んだのだ。

母親にそれを言うと怒り、警察に電話をかけ直して「なんでもないんで大丈夫です」と言ったが、警察はそれでも来てくれた。

不登校だったりそんなこともあったので児童相談所も頻繁に家に来るのだが、母親に「元気です大丈夫ですと言いなさい」と言われていたので、その通り振る舞い続けた。

 

だれもこのおかしさに気付かない。自分すらも。

母親の口癖は「愛してる」。当時は言葉の意味もよくわからないままに受け止めていた。母の言動のどこが、何が、私を愛してるのかわからなかったから。

 

次第に一家離散し、離婚した。

私、母、妹の3人で生活保護を受けていたが、父親がいなくなった分しわ寄せが全て私に来た。

毎日怒鳴り叫ばれる日々。「知的障害者」「なんで生きてるの」「お前が生きてる意味教えて」「死ねよ早くなんで死なないの?」叫びながら言われた。

私が何かすると怒られるので、言われたこと以外はほんとに何もしないようにした。

買ってきたお弁当の蓋を開けていいのかもわからない。「開けなさいよ」開けようとする。失敗したらどうしよう、こぼしたら怒られる。恐怖で手がガクガク震える。こぼした。

叩かれた。

そういう、日常。

 

私は、完全な、鬱病になっていた。

 

 

つづく